日本刀の鍛えについて 鍛肌の種類

鍛肌の種類

日本刀は折り返し鍛錬によりその接合層が現れます。木の年輪に似ているため柾目、板目、杢目(木目)という名称が使用されていると推測します。この層は折り返し鍛錬のやり方である程度自由に表現できます。大肌にしたければ折り返す数を減らし、詰んだ肌にしたければ数を増やします。また一文字鍛、十文字鍛で伸ばせば平地は板目、一文字鍛、十文字鍛をしてから最後に90度(上面を横に)回転し伸ばせば平地は柾目に、四方柾鍛をすれば平地もも柾目になります。(芯鉄を入れない丸鍛素延べの場合)
折り返し鍛錬は15回折り返すと理論上は32768層になります(2の15乗)。色の違う粘土を2つ用意し練るとこの原理を簡単に見ることができます。
この層が肌になります。

刀鍛冶を目指し実際に作刀もした私から一言(長文)

私は当時名刀を作ろうと探究した時、刃文よりもこの鍛え方が一番 「折れず曲がらず良く切れる」 に影響すると考えていました。

鍛えが土台といいましょうか、基本と考えます。

「折れず曲がらず良く切れる」ためには焼き入れ温度も炭素量も刃文の形状も全て総体的なバランスが大切だというのが私の答えにあるので、 刃文は〇〇が一番よいという答えにならないのです。

家で言うとこの鍛えは構造と言いましょうか、四隅に柱がないといくら頑丈な材料を使っても崩れやすいというのはご理解していただけると思います。

四隅に柱がない家に いくら腕の良い大工が仕上げ施工してもいずれ崩れます。RCならコンクリートの中に鉄筋や、免震部分にゴムが入ってないと建物は長くは持たず。 木造在来工法なら筋違がないと横揺れに弱くなります。

RCではゴムが石では駄目で、木造では筋違がゴムでは駄目なのです。

このようにその構造に必要なものがあり、必要なものは欠けていては駄目であり、逆に構造に必要なものが整っていれば(知っていれば)見習いの大工が施工をしても丈夫な建物になると考えています。

日本刀の鍛えの話に戻しますが、板目は曲がりに弱く、打ち込みの力に強い、柾目は曲がりに強く、打ち込みに弱いと考えております。(芯・皮鉄を入れない丸鍛えの場合を想定し集成材で実験すると納得していただけるかもしれません)

この各弱みを補うため、板目は靭性を高める炭素量に調整、刃文を〇〇にし、鎬厚を厚くしたり、柾目は身幅を広くしたり、刃文を□□にするなど、これはあくまで単純な例ですが、この鍛えに合わせた硬さ、刃文、姿があると考えております。よって良く練れているから必ずしも折れないわけでもなく、練れてなく、鍛え割れが出ていてもワイヤーの束が複雑に絡まって一つの綱となり強度が保てる構造もあり得るというわけでございます。 丸鍛えが一番良いわけでもなく、四方詰めが一番良いのわけでもありません。板目が良いわけでもなく、柾目が良いわけはありません。 それに合わせた刃文、硬さ、姿、その刀の使い方があると推測します。 話が長くなりましたが、下記はその鍛え方が刀の表面に現れた模様です。

鍛肌を図でご紹介します。
↓見たい箇所をクリックして開いてください。(アコーディオン機能で▼ボタンのバーをクリックすると開閉します)
以下わかりやすい剣鑑定読本(著者永山光幹 発行株式会社青雲書院)から図を引用させていただきます。
鍛肌の種類(杢目)
鍛肌の種類(柾目・板目・綾杉・松皮)
鍛肌の種類(小糠肌・縮緬・無地)
以上 剣鑑定読本(著者永山光幹 発行株式会社青雲書院)引用

刃文についてはこちらのページで記載しています。

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