刃文の種類
日本刀の刃文は細かく分ければ何十種類と分けられますが、大きく分ければ二種類です。 直刃と乱れ刃です。乱れ刃の中に互の目、三本杉、丁子刃等が入ります。 図を見る時はアコーディオンバー(右側に▼マークのバー)をクリックすると開閉します。見たい刃文を探してみてください。 刀鍛冶を目指し実際に作刀もした私から一言 日本刀の刃文はほぼその刀工の狙い通りにできます。焼き刃土という炭と粘土等を独自の配分で混ぜたものを、刀身に塗ります。 硬くしたい部分(刃)は薄めに塗るか、まったく塗らない、それ以外に焼き刃土を塗ります。 焼き入れ時に水で急冷すると時に、この焼き刃土が急冷を抑制するものになり、急冷されたところはマルテンサイトという 陶磁器並みの硬さの鉄組織になります。これが焼き刃です。焼き刃の周りには匂い口という地と焼き刃の混合組織ができます。 この匂い口を含め刀剣界で刃文と呼ばれています。 以下わかりやすい剣鑑定読本(著者永山光幹 発行株式会社青雲書院)から図を引用させていただきます。
刃文の種類(直刃・湾れ・互の目・各仕立て)
刃文の種類(広直刃・中直刃・細直刃・各仕立て)
刃文の種類(直刃仕立て匂崩れ・小湾れ・大湾れ・湾れ仕立て乱れ・互の目乱れ・片落ち・三本杉・丁子)
刃文の種類 (箱乱れ・矢筈・小丁子・小乱れ・逆丁子(さかちょうじ※1)・逆乱れ・馬の歯)
刃文の種類 (腰の開いた乱れ刃・皆焼ひたつら・濤乱刃とうらんば・簾刃すだれば・菊水・吉野・竜田・富士)
※1ここで言う逆は「さか」と読み江戸時代の書を見ると坂の字が使われております。坂は斜めを意味します。切先に向かっても、刃区に向かってもどちらも坂です。因みに鑢目の逆鷹ノ羽の「逆」は字のままぎゃくという意味です。ややこしいです。
切先の刃文(帽子/鋩子)
切先にも刃文があります。帽子(ぼうし)と呼ばれています。 ここでは18種類の帽子をご紹介いたします。
小丸・小丸上がり・小丸下がり・横手上刃細し・大丸・一文字返り・焼き詰め・掃きかけ・乱れ込み
丁子乱れ込み・地蔵・火焔・一枚・沸崩れ・湾れ込み・返り寄る・返り硬い・返り深い
以上 剣鑑定読本(著者永山光幹 発行株式会社青雲書院)引用
一枚だけの図で覚えるよりも多くのものを見た方が覚えやすく間違いもないと思います。 例えば上記の図の掃き掛けと火焔の違いが一枚の図だけではわかりずらいと思います。 別途ページをつくる予定です。そこで複数の帽子の図や写真等の資料を見て覚えていただければと思います。
刃文について
真剣以外の包丁や模造刀でも刃文らしきものを見たことがあると思われます。一般的な包丁の刃文は日本刀の焼き刃土を使用した焼き入れから生まれる刃文とは違い、刃になる部分に一枚の硬い板材を使用し、色味の異なる材料等を張り合わせたりし、材料の違い等により刃文として見えています。(他さまざまな工法が有りますが、一般的に包丁は峰側まで研いでも最後まで刃がある構造で、日本刀は焼き刃を超えれば刃がなくなる構造)模造刀は単に細かく傷を付けているため見た目だけ刃文のように見えます。同じ硬さ、同じ材質のものに表面上加工しただけです。焼き刃がある本物の日本刀は刃は硬く、地は刃より柔らかく、匂い口は刃と地の組織が混在する部分となります。その匂い口には沸(にえ)や匂(におい)働き(はたらき)が現れます。
以下は直刃仕立てで化粧研ぎ(刃取り)された日本刀(真剣)の写真です。
焼き刃と匂い口と刃取り
刃取りは研師がおこないます。写真の刀は直刃のように刃取りしていますが、焼き刃をなぞるように互の目調の刃取りもできます。研ぎを依頼する場合、普通は研ぎ師任せなのですが、実は刃取りは高めに、派手に、上品になど相談できます。(個体差、さまざまな要因が絡み合うため99%研師任せをおすすめします)
弊社以外から刀を購入する際の注意事項 元々焼き刃があった刀でも、研ぎ減り又は火事で焼き刃がなくなった刀があります。 悪意、善意不明ですが、それを模造刀のように刃文を描いた刀が少ならからず存在します。 白熱灯などでかざして焼き刃があるか確かめるやり方もあるのですが、これを利用した新たな鈍ら刀がありました。(2023年6月) プロの刀剣商2名、さらには研ぎ師でさえも研ぐまでわからなかった手の込んだものです。しっかり本物のような匂い口がありました。 なまくら刀を見極めるポイントは別途ページをつくりましたのでそちらでご紹介します。
↓これが手の込んだ鈍ら刀です。